TeX Alchemist Online

TeX のこと,フォントのこと,Mac のこと

☃ゆきだるまで素因数分解を可視化しよう!☃

この記事は TeX & LaTeX Advent Calendar 2015 の23日目の記事です。16日目に次いで2回目のエントリーとなります。 22日目はu_riboさんでした。 24日目はgolden_luckyさんです。

本記事では,ゆきだるま☃を用いて素因数分解を次のように可視化する方法を解説します。

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\mathchoice の闇

この記事は TeX & LaTeX Advent Calendar 2015 の16日目の記事です。 15日目はokomokさんでした。 17日目はあざらしさんです。

本記事では,LaTeX ユーザでも知っておくと役立つ TeX のプリミティブ \mathchoice の解説を行い,その使用上の注意点を取り上げます。

ちなみに,この記事中の画像は全て拙作の TeX2img で作成しています(ステマ)

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\mathchoice とは?

\mathchoice は,使用場所に応じて数式の出力のされ方を変えるために用いられるプリミティブです。4つの引数を伴って使います。

\mathchoice{ディスプレイ}{テキスト}{スクリプト}{スクリプトスクリプト}
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鉄緑会東大物理問題集 今月発売!

今月,既刊の 鉄緑会東大問題集シリーズ に新たな科目が加わり,「鉄緑会 東大物理問題集」が刊行されます!

2016年度用 鉄緑会東大物理問題集 資料・問題篇/解答篇 2006‐2015

2016年度用 鉄緑会東大物理問題集 資料・問題篇/解答篇 2006‐2015

東大物理の過去問10年分を解説した書籍ですが,分析・解説を極めて詳細に記した結果,全600ページを超える大著となりました。

さて,本記事では,TeX組版的な側面から,この新刊の紹介をしようと思います。

まず,「東大化学問題集」のときと同様,Mac OS X + upLaTeX + dvipdfmx + jsarticle + ヒラギノ をベースとした組版環境で作成しています。

一方,既刊の東大問題集シリーズとの違いとしては,後発のメリットを活かして,デザインに TikZ を徹底活用したという点が挙げられます。例えば,次のページサンプルをご覧ください。

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Overleaf で日本語を使用する方法

これは旧バージョンの Overleaf v1 に関する古い記事です。最新の v2 に対応した更新版記事「Overleaf v2 で日本語を使用する方法」が公開されています。

doratex.hatenablog.jp

Overleaf(旧writeLaTeX) は,オンラインで使える LaTeX 原稿執筆環境として非常に便利です。自分のマシン内に TeX 環境を構築するのは一手間二手間かかりますし,インストールする権限がない場合や,出先の端末を使う場合などにも,環境整備の必要なくブラウザのみですぐに LaTeX 原稿を執筆できるのは好都合でしょう。

また,Google Document のような複数人による共同編集機能もあります。複数人で環境を揃えて同時共同執筆を行うことができるのは,クラウドならではのメリットでしょう。

自分が愛用しているのは,「ソースとコンパイル結果のセットを閲覧専用で提示する」機能です。「このソースをコンパイルするとこんな結果になりますよ」というのを見やすく示すことができます。

Overleaf による TikZ の展示例

自分はこの機能を,TikZ のソース例を示すのによく用いています。

Overleaf で日本語を使用する

Overleaf は,現時点ではバックグラウンドで TeX Live 2014 が動いています。ということは,(u)pLaTeX や dvipdfmx も入っているわけで,日本語を用いた和文文書も作れるはずです。 ただし,Overleaf はデフォルトでは海外で主流の pdfLaTeX を使う設定になっているので,和文文書を作成するには多少設定が必要です。

公式のヘルプに Overleaf で pTeX を使う方法 の解説があるのですが,この方法では pLaTeX + dvipdf (≒ dvips + gs)という変換経路になります。日本で現在主流であろう,(u)pLaTeX + dvipdfmx の経路で作成するには,次のように設定する必要があります。

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chemfigパッケージによる構造式描画

この記事は TeX & LaTeX Advent Calendar 2014 の12日目の記事です。 11日目はkinoさんでした。 13日目はnerukoさんとなっています。

今年の TeX & LaTeX Advent Calendar 2014 には,3日目に続き,2回目のエントリーとなります。

今日は,昨年の Advent Calendar の記事「TeXによる化学組版」の続編です。今年の Advent Calender では,8日目のアセトアミノフェンさんの記事も化学関連でした。また,20日目のTeXゼミさんも化学関連,17日目のワトソンさんは生物関連の記事を執筆してくださる予定だそうす。

化学・生物分野でもTeXがじわじわと普及しているのであれば嬉しい限りです。

ちなみに,この記事中の「出力結果」の画像は全て拙作の TeX2img で作成しています(こっそり宣伝)

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枝分かれや環状構造を持つ分子の構造式描画

昨年の Advent Calendar の記事の末尾に,次のように書きました。

上記の例のような比較的シンプルな構造式ならこれでよいですが,ベンゼン環の三置換体以上であったり,枝分かれのある炭化水素の場合などはどうすればよいでしょうか。 これは悩ましい問題です。

この問題に対する一つの大きな解決策として,chemfigパッケージというのを見つけました。これは,TikZを使って化学構造式を描画するための非常に強力なパッケージです。TeX Live であれば標準でインストールされています。

chemfigパッケージを使えば,枝分かれのある構造や環状構造,立体表示,電子式などが簡単に表示できます。

chemfigパッケージを使ってみよう

pLaTeX + dvipdfmx で使うための最低限のプリアンブルの設定,および簡単なサンプルは以下の通りです。

【入力】

\documentclass{jsarticle}
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
\usepackage{chemfig}
\begin{document}
\chemfig{CH_3-CH(-[2]CH_3)-CH_2-C(=[:60]O)-[:-60]O-H}
\end{document}

【出力】

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TikZによる連成振動アニメーション (3) 〜 動画投稿篇

以前の記事では,TikZによる連成振動アニメーションをGIFアニメに変換しました。
しかし,H.264などの現代的な動画形式などと異なり,GIFアニメは圧縮が全く効きませんので,ほんの数百フレームのアニメでも数MBもの巨大なファイルになってしまいます。

そこで,H.264の動画に変換した上で,「6秒動画」で知られるVineに投稿してみました。

動画に変換して投稿するまでの作業記録を記しておきます。
TeX Live 2014 on Mac OS X 10.9.4 で作業しました。

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「2015年度受験用 鉄緑会 東大化学問題集」発売!

今週,いよいよ「2015年度用 鉄緑会 東大化学問題集」が発売となりました!

昨年は出版初年でしたので,執筆作業がずれ込んで9月発売となりましたが,今年は無事に7月発売に間に合いました。

今年度の改訂内容

主な改訂事項は,最新の2014年東大化学の解説です。
今年の東大化学の解説を書くにあたっては,一見簡単な問題に対して,とことん掘り下げて解説することにこだわりました。反応速度に関する複数の設問を,速度論の理論を用いて統一的に考察したり,イオン結晶の溶解熱の問題を分数関数の微分法を用いて考察したり,有機化学の問題でテーマとなっていた温度応答性高分子の砂漠の緑化への応用を述べたりと,「問題の解き方の解説」の範疇に留まらず,深い背景の考察まで行っています。

また,昨年度以前の解説についても,新たに得られた知見については書き加えてアップデートしています。
例えば,鉄緑会の授業の中で演習として実施した際に,その答案から新たな別解が得られたものがあり,それを別解として新たに収録してあります。また,ディーゼル車の排ガスの処理法として書かされる反応式が,実は胃の中でピロリ菌が胃酸を中和して住み着くために行っている酵素反応と同じであるといった新たなトピックも適宜書き入れて,より詳しく面白い“東大化学の研究書”になるよう,完成度に磨きをかけていっています。

もちろん,昨年度の初版をお読みになった読者の方々から頂いた誤植の指摘や,より分かりやすい記述の提案などは,今年度版では漏れなく反映してあります。

TeX的な話

昨年度版と同様,upLaTeX + dvipdfmxによる組版です。
組版面での今年の新たな試みとしては,TikZの活用という点が挙げられます。

TikZの活用

例えば,以前TikZで作成した東大化学の設問数の推移グラフは,そのまま本書にも掲載しました。
また,昨年度版の作成にあたっては,picture環境を用いてベンゼン環を描画したり,TeX2imgを用いて枝分かれのある構造式を作成したりしていまいたが,今年度版では,chemfigパッケージを利用することで,ベンゼン環や枝分かれのある構造式もTikZで作成するようにしています。

もちろん,化学では,試験管・フラスコといった実験器具の図をはじめ,複雑な図版も多数使用します。ですから,手間を考えると,全ての図版をもれなくTikZで作成するということまではできておりませんが,今後も可能な範囲でより一層TikZを活用していこうと考えています。

複雑なTikZの図を含めるとコンパイルが遅くなりますので,previewパッケージを用いて図版単独のPDFを作成し,それを \includegraphics で取り込むというワークフローがお勧めです。

その他

その他組版上の細かい話としては……

  • 今年度は,otfパッケージのburasageオプションを用いることで,行末の句読点を余白部分にはみ出させる「ぶら下げ組」で組んでみました。TeX的には,句読点の幅が0zw,その後にtfmから挿入されるグルーが(通常の場合)1zwになるようなtfmを用いていることになります。
  • 欧文フォントをOT1エンコーディングのComputer ModernからT1エンコーディングのLatin Modernに変更。見た目にはほとんど分かりませんが,理論上,リガチャやペアカーニングが微妙に変わっているはず。
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Illustratorで描いた図をTikZに変換

TikZでマグネチックスターラー(下写真*1)の図を描きたいと思いました。

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しかしこれをTikZを使って座標で一からゴリゴリ描いていくのは流石に辛い……というわけで,若干チートして,まずは Adobe Illustrator を使って普通に描き,それからTikZに変換するという手法を試みてみました。

まずはIllustratorで描く

まずはIllustratorでこんな感じに描きます。

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*1:Wikimedia Commons よりRuhrfisch氏のGFDLの画像を引用。

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TikZによる連成振動アニメーション (2) ~ 動くPDF篇

前回の記事では,TeX (TikZ) でパラパラ漫画PDFを作成し,続いてそれを ImageMagick の convert コマンドによってアニメーションGIFに変換していました。
しかし,これには次のような問題点がありました。

  • ビットマップ化するため画質が粗く,画質を上げようとするとファイルサイズがかなり大きくなってしまう。
  • アニメ化の部分に ImageMagick を使っており,アニメーション作りがTeXだけで完結していない。

そこで,animateパッケージを使って,TeXだけでアニメーションPDFを作ってみましょう。*1

*1:この手法は id:zrbabbler さんの記事「TeX で花火を打ち上げてアニメーションする件について」で学びました。

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