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「2015年度受験用 鉄緑会 東大化学問題集」発売!

今週,いよいよ「2015年度用 鉄緑会 東大化学問題集」が発売となりました!

昨年は出版初年でしたので,執筆作業がずれ込んで9月発売となりましたが,今年は無事に7月発売に間に合いました。

今年度の改訂内容

主な改訂事項は,最新の2014年東大化学の解説です。
今年の東大化学の解説を書くにあたっては,一見簡単な問題に対して,とことん掘り下げて解説することにこだわりました。反応速度に関する複数の設問を,速度論の理論を用いて統一的に考察したり,イオン結晶の溶解熱の問題を分数関数の微分法を用いて考察したり,有機化学の問題でテーマとなっていた温度応答性高分子の砂漠の緑化への応用を述べたりと,「問題の解き方の解説」の範疇に留まらず,深い背景の考察まで行っています。

また,昨年度以前の解説についても,新たに得られた知見については書き加えてアップデートしています。
例えば,鉄緑会の授業の中で演習として実施した際に,その答案から新たな別解が得られたものがあり,それを別解として新たに収録してあります。また,ディーゼル車の排ガスの処理法として書かされる反応式が,実は胃の中でピロリ菌が胃酸を中和して住み着くために行っている酵素反応と同じであるといった新たなトピックも適宜書き入れて,より詳しく面白い“東大化学の研究書”になるよう,完成度に磨きをかけていっています。

もちろん,昨年度の初版をお読みになった読者の方々から頂いた誤植の指摘や,より分かりやすい記述の提案などは,今年度版では漏れなく反映してあります。

TeX的な話

昨年度版と同様,upLaTeX + dvipdfmxによる組版です。
組版面での今年の新たな試みとしては,TikZの活用という点が挙げられます。

TikZの活用

例えば,以前TikZで作成した東大化学の設問数の推移グラフは,そのまま本書にも掲載しました。
また,昨年度版の作成にあたっては,picture環境を用いてベンゼン環を描画したり,TeX2imgを用いて枝分かれのある構造式を作成したりしていまいたが,今年度版では,chemfigパッケージを利用することで,ベンゼン環や枝分かれのある構造式もTikZで作成するようにしています。

もちろん,化学では,試験管・フラスコといった実験器具の図をはじめ,複雑な図版も多数使用します。ですから,手間を考えると,全ての図版をもれなくTikZで作成するということまではできておりませんが,今後も可能な範囲でより一層TikZを活用していこうと考えています。

複雑なTikZの図を含めるとコンパイルが遅くなりますので,previewパッケージを用いて図版単独のPDFを作成し,それを \includegraphics で取り込むというワークフローがお勧めです。

その他

その他組版上の細かい話としては……

  • 今年度は,otfパッケージのburasageオプションを用いることで,行末の句読点を余白部分にはみ出させる「ぶら下げ組」で組んでみました。TeX的には,句読点の幅が0zw,その後にtfmから挿入されるグルーが(通常の場合)1zwになるようなtfmを用いていることになります。
  • 欧文フォントをOT1エンコーディングのComputer ModernからT1エンコーディングのLatin Modernに変更。見た目にはほとんど分かりませんが,理論上,リガチャやペアカーニングが微妙に変わっているはず。

姉妹本

同時に,姉妹本である「東大数学問題集」「東大古典問題集」も発売となっています。

「東大数学問題集 30年分」

また,長らく品切れして入手困難であった「東大数学問題集 30年分」も,このたび5年ぶりに重版となりました!

鉄緑会東大数学問題集 資料・問題篇/解答篇 1980-2009〔30年分〕

鉄緑会東大数学問題集 資料・問題篇/解答篇 1980-2009〔30年分〕

今年度の受験生から数学の新課程が施行され,行列・一次変換が高校数学から消滅し,代わりに複素数平面が約10年ぶりに高校数学に復活してきます。
このニュース記事にも書かれているように,10年以上前の,複素数平面に関する東大の過去問を解いて練習したいという受験生にとっては,1980年からの問題を収録したこの「東大数学問題集 30年分」が役立つのではないかと思います。

価格は少々(かなり?)お高いですが,それに見合うだけの圧倒的な解説の質・量を備えています。
例えば次の問題。新課程で復活した複素数平面に関する昔の問題です。

複素数平面上で原点以外の相異なる2点P(α), Q(β)を考える。P(α), Q(β)を通る直線をl,原点からlに引いた垂線とlの交点をR(w)とする。ただし,複素数γが表す点CをC(γ)とかく。このとき,

「w=αβであるための必要十分条件は,P(α), Q(β)が中心A(1/2),半径1/2の円周上にあることである。」

を示せ。

[2000年度 東大理系数学第2問・文系数学第4問]

鉄緑会 東大数学問題集 30年分」では,この問題に対して,実に11種類もの解法を,B5判2段組で7ページにわたって解説しています。
新課程での新分野である複素数平面は,練習台となる過去問が少ない中,そこを強化したい受験生にとっては,「鉄緑会 東大数学問題集 30年分」が大いに役立つのではないかと思います。